2010年10月。宮城県の港町に暮らす高校2年生の小羽(こはね)は、統合失調症を患う母を抱え、介護と家事に忙殺されていた。彼女の鬱屈した感情は、同級生である、双極性障害の祖母を介護する航平と、アルコール依存症の母と幼い弟の面倒を見る凜子にしか理解されない。3人は周囲の介護についての無理解に苦しめられ、誰にも助けを求められない孤立した日常を送っていた。
しかし、町にある親族の家に身を寄せていた青葉という女性が、小羽たちの孤独に理解を示す。優しく寄り添い続ける青葉との交流で、3人が前向きな日常を過ごせるようになっていった矢先、2011年3月の震災によって全てが一変してしまう。
2022年7月。看護師になった小羽は、震災時の後悔と癒えない傷に苦しんでいた。そんなある時、彼女は旧友たちと再会し、それを機に過去や、青葉が抱えていた秘密と向き合うことになる……。
前川ほまれ
(マエカワホマレ )1986年生まれ、宮城県出身。看護師として働くかたわら、小説を書き始める。
2017年『跡を消す 特殊清掃専門会社デッドモーニング』で、第7回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。『シークレット・ペイン 夜去医療刑務所・南病舎』は第22回大藪春彦賞の候補となる。その他の著書に『セゾン・サンカンシオン』がある。