三人は同じ日の夜に出会い、恋に落ちた。俺は彼女に。彼女はあの男に。そして、あの男が恋をした相手は俺だった。なぜ俺なのか、とあの男に訊いてみた。健やかな馬鹿がタイプなのだという。それって悪口じゃないのか? それはともかく俺たちの一方通行の三角関係は、しかしそれほど時間を置くこともなく、べつのものへと姿を変えていった(「明日世界は終わらない」)。せつなかったり、さびしかったり、困ったりしている愛すべき人たちが、右往左往しながら新しい人間関係を築いてゆく珠玉の五編を収録する。
〈英国幻視の少年たち〉『この夏のこともどうせ忘れる』の俊英が贈る、軽やかで、ときにメランコリックな作品集。
「なにも傷つけないように、おやすみ」
「明日世界は終わらない」
「不自由な大人たち」
「家族の事情」
「砂が落ちきる」
深沢仁
(フカザワジン )2010年、詩集『狼少女は羊を逃がす』を自費出版。翌年、『R.I.P. 天使は鏡と弾丸を抱く』で第2回「このライトノベルがすごい!」大賞優秀賞を受賞、本格的な執筆活動をスタートさせる。20年には作品集『この夏のこともどうせ忘れる』で第12回高校生が選ぶ天竜文学賞を受賞。ほかの著書に『眠れない夜にみる夢は』『渇き、海鳴り、僕の楽園』〈英国幻視の少年たち〉シリーズ(全6巻)などがある。