僕が住んでいるのは、無数の広間がある広大な館。そこには古代彫刻のような像がいくつもあり、激しい潮がたびたび押し寄せては引いていく。この世界にいる人間は僕ともうひとり、他は13人の骸骨たちだけだ……。過去の記憶を失い、この美しくも奇妙な館に住む「僕」。だが、ある日見知らぬ老人に出会ったことから、「僕」は自分が何者で、なぜこの世界にいるのかに疑問を抱きはじめる。数々の賞を受賞した『ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル』の著者が、異世界の根源に挑む傑作幻想譚。
スザンナ・クラーク
1959年に英国でメソジスト派の牧師の娘として生まれ、幼いころは北イングランドやスコットランドを転々とする。オックスフォード大学で哲学・政治・経済を学び、卒業後は出版関係の職業に就いたが、その後1990年から2年ほどイタリアとスペインで英語教師として働く。帰国後編集の仕事をしながら10年以上かけて書き上げた『ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル』が2004年に発表されるや、世界的なベストセラーになり、世界幻想文学大賞、ヒューゴー賞、ミソピーイク賞、ローカス賞新人賞を受賞、ブッカー賞の最終候補やウィットブレッド賞新人部門の最終候補にも残っている。
原島文世
(ハラシマフミヨ )群馬県生まれ。英米文学翻訳家。主な訳書にクラーク「ピラネージ」、マグワイア「不思議の国の少女たち」、キングフィッシャー「パン焼き魔法のモーナ、街を救う」、リード「ザ・ブラック・キッズ」などがある。