終末世界を圧倒的な筆致で描ききったバラードを代表する“濃縮小説(コンデンスド・ノベル)”の傑作「終着の浜辺」。いつとも知れぬ処刑の日を待ちながらチェスに興じる死刑囚と執行人の静かな戦い、遺跡に残された美しい少女の幻影装置を拾った青年、襲いくる海の幻影におののく男の話などを通して、絢爛かつ退廃に満ちた内的宇宙を余すところなく描破した鬼才のSF全9編。(『時間の墓標』改題)
J・G・バラード
英国を代表する作家。1930年、上海生まれ。「人間が探求しなければならないのは、外宇宙(アウター・スペース)ではなく、内宇宙(インナー・スペース)だ」として、SFの新しい波(ニュー・ウェーブ)運動の先頭に立った。終末世界を独自の筆致で美しく描き出した〈破滅三部作〉と呼ばれる『沈んだ世界』『燃える世界』『結晶世界』や、濃縮小説(コンデンスト・ノベル)と自ら名づけた手法で書き上げた短編を発表し、その思弁性が多くの読者を魅了した。『太陽の帝国』はスピルバーグ監督、『クラッシュ』はクローネンバーグ監督、『ハイ・ライズ』はベン・ウィートリー監督によって映画化された。他の著作に《J・G・バラード短編全集》全5巻、『殺す』『コカイン・ナイト』『人生の奇跡J・G・バラード自伝』など。2009年没。