皮肉屋で独善的な文筆家の父と、人生への希望を失った母の元を離れて大学の女子寮に入った17歳のナタリー。息詰まる家を脱出した先に待っていたのは、理解不能な同級生や高慢な上級生たち。ただ一人、トニーという風変わりな少女だけは他と違っていた。彼女なら、どこまででもあたしを連れていってくれる……。思春期の少女の心を覆う不安と恐怖、そして憧憬を描く幻想長編小説。解説=深緑野分
シャーリイ・ジャクスン
アメリカの作家。1916年、カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。48年、長編The Road Through The Wallで本格的にデビュー。また、同年〈ニューヨーカー〉誌に発表した短編「くじ」が大きな評判を呼ぶ。著作に、『丘の屋敷』、『ずっとお城で暮らしてる』、『なんでもない一日』、エッセイ『野蛮人との生活』などがある。65年没。
市田泉
(イチダイヅミ )1966年生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒。英米文学翻訳家。訳書にジャクスン『ずっとお城で暮らしてる』、キャロル『薪の結婚』、サマター『図書館島』、ジョイス『人生の真実』、ヴクサヴィッチ『月の部屋で会いましょう』(岸本佐知子と共訳)他多数。