震災を機に故郷を、家族を、知的障害のある兄を捨てて上京したフリーライター・小野寺衛は、兄の急死の知らせを受け、7年ぶりに故郷・松島に帰る。かつて一緒に遊んだ海岸で兄は自死したらしいが、衛は信じることができない。兄の死の謎を追う衛が知ることになる、慟哭の真実とは? 障害者への無意識の差別、きょうだい児問題、貧しさへの“怒り”に満ちた筆致で贈るミステリ。著者あとがき=五十嵐大
第一章 小野寺衛の追懐
第二章 小野寺健蔵の悔恨
第三章 涌谷妙子の渇望
第四章 酒井百合の欺騙
第五章 小野寺衛の慟哭
五十嵐大
(イガラシダイ )1983年、宮城県生まれ。元ヤクザの祖父、宗教信者の祖母、耳の聴こえない両親のもとで育つ。自身の両親のことを綴ったエッセイ『ぼくが生きてる、ふたつの世界』が、吉沢亮主演で映画化され話題となる。主な著書に、『しくじり家族』『隣の聞き取れないひと』『聴こえない母に訊きにいく』がある。『エフィラは泳ぎ出せない』が小説家デビュー作である。