目を覚ますと見覚えのない土地の草叢(くさむら)で、蔓(つる)で縛られ、身動きが取れなくなっていた。仰向けの胸には灰色の猫が座っていて、「ちょっと話を聞いてほしいんだけど」と声を出すものだから、驚きが頭を突き抜けた。「僕の住む国では、ばたばたといろんなことが起きた。戦争が終わったんだ」猫は摩訶不思議な物語を語り始める──これは猫と戦争、そして世界の秘密についてのおはなし。解説=松浦正人
伊坂幸太郎
(イサカコウタロウ )1971年千葉県生まれ。2000年、『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビューする。04年、『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、短編「死神の精度」で第57回日本推理作家協会賞、08年には『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞および第21回山本周五郎賞を受賞。ほかの著書に『重力ピエロ』『砂漠』『モダンタイムス』『あるキング』『マリアビートル』『残り全部バケーション』『死神の浮力』『アイネクライネナハトムジーク』『火星に住むつもりかい?』などがある。また14年には『キャプテンサンダーボルト』で阿部和重との合作に挑み話題を呼んだ。