きっかけはほんのささいな出来事。だが、八駒家の食卓にのぼると、それは一篇のミステリへと姿を変える──。家主の敬典は、旅行会社勤務だったが、今は専業主夫。ある日、元先輩が壊れたフランス人形を「なんとかしてくれ」と持ち込んできた。いいように利用されていると中学生の娘つばめは憤慨しきりだけれど、敬典の頭にはある推理が……。心あたたまる、愉しいおうちミステリ。解説=三橋暁
門井慶喜
(カドイヨシノブ )1971年群馬県生まれ。同志社大学卒。2003年「キッドナッパーズ」で第42回オール讀物推理小説新人賞を受賞、06年に最初の著書となる『天才たちの値段』を刊行する。16年『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』が第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)を、18年『銀河鉄道の父』が第158回直木賞を受賞。主な著書に『人形の部屋』『この世にひとつの本』『シュンスケ!』『東京帝大叡古教授』『家康、江戸を建てる』『屋根をかける人』『新選組の料理人』『にっぽんの履歴書』がある。