妻・香映の死を受け入れられずに不眠症を患った洋介は、謎に満ちた妻の過去から、死の真相を探る決意を固める。老舗酒蔵である実家を手伝う傍ら、自殺の名所と呼ばれる森で自殺防止ボランティアとして活動していた彼女に、あの日いったい何が起きたのか──。暴かれていく真実は、名酒を生み出す母なるあの森へと洋介を導く。話題の著者が巧みな心理描写で端正に描く、長編ミステリ。著者あとがき=吉永南央/解説=西上心太
吉永南央
(ヨシナガナオ )1964年埼玉県生まれ。群馬県立女子大学卒業。2004年、コーヒー豆と和食器の店を営むおばあちゃん探偵の活躍を優美に描いた「紅雲町のお草」で、第43回オール讀物推理小説新人賞を受賞。2008年1月に受賞作を含む連作短編集『紅雲町ものがたり』を刊行。第一長編は『誘(いざな)う森』。