●貫井徳郎氏推薦――「味わい深い小説が読みたければ、ゴダード」
姪の結婚披露宴に、少年時代の親友が闖入してきた。落魄した友は、三十四年前の秋、殺人罪で絞首刑になった父親の無実を訴え、翌朝自殺する。罪悪感に突き動かされたわたしは、疎遠にしていた人々を訪ねる旅に出たが……。錯綜する物語は失われたものへの愛惜と激しい悔恨を湛え、万華鏡さながらに変転してゆく。円熟の逸品。
ロバート・ゴダード
イギリスの作家。1954年生。ハンプシャー州に生まれ、ケンブリッジ大で歴史を専攻後、公務員をへて、一九八六年に小説の醍醐味れるデビュー作『千尋の闇』を上梓。特に初期長編の幾重にも折り畳まれたような変幻自在の物語の妙味は比類がないが、『永遠に去りぬ』ではこれに人生の苦みが加わり、味わいは深みを増した。当代随一の語り部として今後も目が離せそうにない。
越前敏弥
(エチゼントシヤ )1961年生まれ、東京大学文学部卒業。英米文学翻訳家。ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』『オリジン』、エラリイ・クイーン『災厄の町』『フォックス家の殺人』『十日間の不思議』、フレドリック・ブラウン『真っ白な嘘』『不吉なことは何も』など訳書多数。主な著書に『翻訳百景』『文芸翻訳教室』『この英語、訳せない!』などが、共著に『シートン動物記で学ぶ英文法』などがある。