悪友からの誘いに乗って、元歴史教師のマーチンはポルトガル領マデイラへ気晴らしの旅に出た。ところが到着の翌日、友人の後援者である実業家に招かれた彼は、謎めいた失脚を遂げた半世紀以上前のある青年政治家にまつわる、奇妙な逸話を聞かされることに……。稀代の語り部が二重底、三重底の構成で贈る、騙りに満ちた物語。
ロバート・ゴダード
イギリスの作家。1954年生。ハンプシャー州に生まれ、ケンブリッジ大で歴史を専攻後、公務員をへて、一九八六年に小説の醍醐味れるデビュー作『千尋の闇』を上梓。特に初期長編の幾重にも折り畳まれたような変幻自在の物語の妙味は比類がないが、『永遠に去りぬ』ではこれに人生の苦みが加わり、味わいは深みを増した。当代随一の語り部として今後も目が離せそうにない。