問題はすべて親の金で解決、交際相手は大学の講師──そんな素行不良の学生バーバラを誘拐する計画があるという怪しげな噂が、大学当局に飛びこんでくる。そして数日後、学生たちが主催する集会の最中に、彼女は本当に拉致された。ところが、この事件は思いもよらぬ展開を迎え、ついには殺人へと発展する! 謎解き職人作家ディヴァインが誘拐テーマに挑んだ、最後の未訳長編。解説=阿津川辰海
D・M・ディヴァイン
1920年スコットランド生まれ。大学職員時代、英国有数のミステリ出版社コリンズ社の探偵小説コンクールに投じた『兄の殺人者』がアガサ・クリスティから高く評価され、執筆活動に入る。デビュー以降もアントニイ・バウチャー、H・R・F・キーティングら具眼の士より絶賛される、極めて完成度の高い本格作品をものした。死後出版の『ウォリス家の殺人』を含め、その生涯で13作の推理小説を発表した。1980年没。
中村有希
(ナカムラユキ )1968年生まれ。1990年東京外国語大学卒。英米文学翻訳家。訳書に、ソーヤー『老人たちの生活と推理』、マゴーン『騙し絵の檻』、ウォーターズ『半身』『荊の城』、ヴィエッツ『死ぬまでお買物』、クイーン『ローマ帽子の謎』など。