診療所の共同経営者を襲った不慮の死は、じつは計画殺人ではないか──市長ハケットからそう言われた医師ターナーは、二ヵ月前に起きた事故の状況を回想する。その夜、故人の妻エリザベスから、何者かに命を狙われていると打ち明けられたこともあり、ターナーは個人的に事件を洗い直そうと試みるが……。英国本格黄金期の妙味を現代に甦らせた技巧派、ディヴァイン初期の意欲作。解説=大矢博子
*第1位『2016本格ミステリ・ベスト10』海外篇
D・M・ディヴァイン
1920年スコットランド生まれ。大学職員時代、英国有数のミステリ出版社コリンズ社の探偵小説コンクールに投じた『兄の殺人者』がアガサ・クリスティから高く評価され、執筆活動に入る。デビュー以降もアントニイ・バウチャー、H・R・F・キーティングら具眼の士より絶賛される、極めて完成度の高い本格作品をものした。死後出版の『ウォリス家の殺人』を含め、その生涯で13作の推理小説を発表した。1980年没。
山田蘭
(ヤマダラン )英米文学翻訳家。ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』『ヨルガオ殺人事件』『メインテーマは殺人』『その裁きは死』『殺しへのライン』『ナイフをひねれば』、クリスティ『スタイルズ荘の怪事件』、ハレット『ポピーのためにできること』など訳書多数。