周囲から軽んじられているタイピストのルースは、職場で拾った奇妙な紙片のことを警察に話すつもりだと、町政庁舎(タウンホール)の同僚たちに漏らしてしまう。その夜、彼女は何者かに殺害された……! 現在の町は、町長選出をめぐって揺れており、少なからぬ数の人間が秘密をかかえている。発覚を恐れ、口を封じたのは誰か? 地方都市で起きた殺人事件とその謎解き、著者真骨頂の犯人当て! 解説=古山裕樹
D・M・ディヴァイン
1920年スコットランド生まれ。大学職員時代、英国有数のミステリ出版社コリンズ社の探偵小説コンクールに投じた『兄の殺人者』がアガサ・クリスティから高く評価され、執筆活動に入る。デビュー以降もアントニイ・バウチャー、H・R・F・キーティングら具眼の士より絶賛される、極めて完成度の高い本格作品をものした。死後出版の『ウォリス家の殺人』を含め、その生涯で13作の推理小説を発表した。1980年没。
中村有希
(ナカムラユキ )1968年生まれ。1990年東京外国語大学卒。英米文学翻訳家。訳書に、ソーヤー『老人たちの生活と推理』、マゴーン『騙し絵の檻』、ウォーターズ『半身』『荊の城』、ヴィエッツ『死ぬまでお買物』、クイーン『ローマ帽子の謎』など。