スパムメールがヒトの姿を借りて、ある日玄関先にあらわれたら?――現実の少し先にあって、けれど決定的な変貌を遂げた日本社会を若者たちの視点から活き活きと描いた近未来SF「二本の足で」にはじまり、独特の浮遊感ただよう幻想小説「あかるかれエレクトロ」や、タイポグラフィを駆使した実験小説「夕暮にゆうくりなき声満ちて風」まで。柔軟にして力強いイマジネーションの結晶9編を収めた、書き下ろしを含む初の独立短編集。
「二本の足で」
「トーキョーを食べて育った」
「おうち」
「再突入」
「天国にも雨は降る」
「夕暮にゆうくりなき声満ちて風」
「あなたは月面に倒れている」
「生首」
「あかるかれエレクトロ」
あとがき
倉田タカシ
(クラタタカシ )1971年埼玉県生まれ。2010年、「夕暮にゆうくりなき声満ちて風」が『NOVA2』に収録されてデビュー。13年に「わたしたちのこれからと、エアロック」が第4回創元SF短編賞の最終候補作となる。14年に第2回ハヤカワSFコンテストに投じた長編『母になる、石の礫(つぶて)で』は最終候補作となり、15年に単行本として刊行された。18年刊の『うなぎばか』で第1回細谷正充賞を受賞。近作に高山羽根子・酉島伝法との共著『旅書簡集 ゆきあってしあさって』(2022年)がある。