ルソーの『告白』に登場する二人の人物、フェランとミナールの物語、仏文学教授の教え子への恋情を綴った手記、書物に埋もれて暮らす老人ミー氏のインターネット超絶滑稽奮闘記。三つの物語が謎の『百科全書』を軸に縒(よ)り合わされ、結ぼれ、生まれたエッシャー的世界。読書の楽しみと知的刺激に満ちた傑作。訳者あとがき=青木純子/解説=風間賢二
アンドルー・クルミー
1961年、スコットランド、グラスゴー生まれ。セント・アンドリューズ大学で理論物理学と数学を学び首席で卒業。ロンドンのインペリアル・カレッジで理論物理学博士号を取得。大学研究員、高校教師を経て、1994年、“Music, in a Foreign Language”で作家としてデビュー。スコットランド文化振興財団ソルタイアの最優秀デビュー作品賞を受賞。第四作目の本書は、アーツ・カウンシル・ライターズ・アワードを受賞している。2003年には、L・ノーフォークやT・フィッシャーなどと同様に、文芸誌「グランタ」の選ぶ「若手イギリス作家ベスト20人」に推挙されたが、年齢基準を超えていた彼は律儀にこれを辞退した。ボルヘスやカルヴィーノに連なる作風として捉えられることが多く、本国では「文学界のエッシャー」とも言われている。
青木純子
(アオキジュンコ )1954年、東京都生まれ。早稲田大学大学院博士課程満期退学。英米文学翻訳家。訳書にG・アデア『閉じた本』、F・アルファウ『ロコス亭 奇人たちの情景』、B・S・ジョンソン『老人ホーム 一夜の出来事』、L・ノーフォーク『ジョン・ランプリエールの辞書』、K・モートン『忘れられた花園』、J・バートン『ミニチュア作家』他多数。