日本陸軍参謀本部で孤独に綴られていた稀有の戦中日記『彼方より』と、待望していた敗戦の日に立ち会うことなくいきなり戦後に放りだされ、小説とひとの愛をひたすらに求め続けた苦い彷徨の記録『黒鳥館戦後日記』『続・黒鳥館戦後日記』、全3冊を収録。“見知らぬ友よ、見知らぬままに我を愛せ。”――痛切に甦る青き春。解説=鶴見俊輔
8『彼方より』(1998) 日記 I
『彼方より』(1971)
「まえがき」/「昭和十八年」/「昭和十九年」/「昭和二十年」/「あとがき」
『黒鳥館戦後日記 西荻窪の青春』(1983)
「一九四五年」/「一九四六年」/「あとがき」
『続・黒鳥館戦後日記 西荻窪の青春』(1984)「一九四七年」/「一九四八年」/「一九四九年」/「あとがき」
解説――中井英夫のこと:鶴見俊輔/解題:本多正一
中井英夫全集付録5(「メーゾン・ベルビウ地帯のころ」椿實、「今頃、『虚無』の読後感」下野博)
中井英夫
(ナカイヒデオ )1922年東京生まれ。東京大学文学部中退。日本短歌社、角川書店で短歌誌編集に従事。1964年、塔晶夫の筆名で刊行されたアンチ・ミステリ『虚無への供物』は、探偵小説の歴史のみならず20世紀文学に金字塔を打ち立てることになった。1974年、『悪夢の骨牌』で第2回泉鏡花文学賞受賞。1993年歿。創元ライブラリ版『中井英夫全集』では、『黒鳥譚』『とらんぷ譚』以下の幻想耽美小説、『香りの時間』に始まる洒脱なエッセイ、戦中日記『彼方より』、詩篇・短歌論など多彩な業績がコンパクトに集成されている。