この世ならぬ美への憧れ、だがこの地上にその希(ねが)いを適える術(すべ)はあらかじめ失われているのだ……。未完の傑作『蒼白者の行進』、北軽井沢を舞台にした奇蹟の消失劇『光のアダム』、短篇『重い薔薇』『薔薇への遺言』、来歴を鏤めた『薔薇の自叙伝』等を収録した。手を一閃して、虚空から花を掴み出すひと、流薔園園丁の供物。解説=笠井潔
4『蒼白者の行進』(1997) 小説 IV
「蒼白者の行進」(1976)/「デウォランは飛翔したか」(1976)/「光のアダム」(1978)/「重い薔薇 薔薇への遺言」/「重い薔薇」(1981)/「薔薇への遺言」(1979)/「暗号と暗合」(1979)/「薔薇の自叙伝――自作解説」(1981)
解説:笠井潔/解題:本多正一
中井英夫全集付録4(「「さようなら」のない思い出」山本美智代、「オーパス・ワンあるいはエストラゴン・オゥ・ヴィネーグル」金澤裕史)
中井英夫
(ナカイヒデオ )1922年東京生まれ。東京大学文学部中退。日本短歌社、角川書店で短歌誌編集に従事。1964年、塔晶夫の筆名で刊行されたアンチ・ミステリ『虚無への供物』は、探偵小説の歴史のみならず20世紀文学に金字塔を打ち立てることになった。1974年、『悪夢の骨牌』で第2回泉鏡花文学賞受賞。1993年歿。創元ライブラリ版『中井英夫全集』では、『黒鳥譚』『とらんぷ譚』以下の幻想耽美小説、『香りの時間』に始まる洒脱なエッセイ、戦中日記『彼方より』、詩篇・短歌論など多彩な業績がコンパクトに集成されている。