中井英夫全集6

ケンタウロスノナゲキ

ケンタウロスの嘆き

中井英夫


ケンタウロスの嘆き

ジャンル
一般文芸 > 全集
一般文芸 > エッセイ
レーベル
創元ライブラリ
シリーズ
中井英夫全集 6

判型:文庫判
ページ数:746ページ
初版:1996年7月19日

ISBN:978-4-488-07010-6
Cコード:C0193
文庫コード:L-な-1-6



内容紹介

“人間ならぬ何か奇妙に悲しい生物”三島由紀夫への痛恨の鎮魂歌、江戸川乱歩ら異端と幻想の作家たちへの限りないオマージュ、『黒鳥の旅もしくは幻想庭園』『ケンタウロスの嘆き』『地下を旅して』――3冊のエッセイ集を初めて文庫化した。地球という名の流刑地をひととき訪れた一羽の黒鳥・中井英夫の人外(にんがい)の嘆き。解説=川村湊


目次

『ケンタウロスの嘆き』(1996) エッセイ I

『黒鳥の旅もしくは幻想庭園』(1974)
〈I オーストラリア幻想旅行〉
「黒鳥の旅」(1970)/「幻想庭園」(1971)/「出口と入口について――言語空間の祭典」(1971)
〈II 白鳥盗人・ほか〉
「ミロのビーナスが教えていったもの――女性の同性愛について」(1964)/「鏡と迷宮――男のナルシシズムについて」(1972)/「白鳥盗人」(1970)/「日本人の貌「非国民の思想」」(1973)/「余白の人「私の憲法論」」(1970)/「暗い宴「わが体験」」(1972)
〈III 百科事典について〉
「百科事典とコンピュートピア」(1967)/「街角での呟き」(1971)/「百科事典と人間と」(1973)
〈IV 色彩・その毒について〉
「色彩・その毒について」(1972)/「アリス狩り」(1973)/「吊された裸童女――建石修志の世界――」(1973)/「イカロスのほほえみ―― 朝顔の青に寄せて」(1973)/「国民服の菊五郎」(1971)/「炎と記憶」(1973)/「悪夢の再来 笠井叡「七つの封印」」(1973)/「ぜいたくということ」(1972)/「文字・色・音 「出会い」」(1972)/「幌の中 「私と医者」」(1973)/「ベッドの中の同行者「独りぐらし」」(1973)/「街の中にタイムトンネルを見つけた」(1973)/「緑への転身」(1973)/「牡蠣の殻なる牡蠣の身の……」(1971)/「石黒健治の「広島」」(1970)/「廃墟の唄 「流行歌について」」(1970)/「名前と翼「漫画について」」(1970)/「古い時計 「映画の時間・観客の時間」」(1970)/「誰が鞭を持ち始めたのか「ナチは復活するか」」(1970)/「金魚と蟻と人間と「人肉喰いの思想」」(1970)/「同時代の吸血鬼」(1969)/「『テオレマ』について」(1970)/「シャンソン二題」(1973,1974)/「あとがき」(1974)

『ケンタウロスの嘆き』(1975)
〈I 作家と作品〉
〔A 三島由紀夫〕「ケンタウロスの嘆き」(1971)/「終りなき宴――『三島由紀夫全集』刊行によせて」(1973)/「見てしまった魂の不幸――『三島由紀夫十代作品集』(1971)/「二度目の遺書――三島由紀夫『小説とは何か』(1972)
〔B 川端康成〕「見えない遺書」(1972)
〔C 吉行淳之介〕「夜の跫音――『薔薇販売人』」(1972)/「小さな魔法――『焔の中』(1973)〔D 寺山修司〕「炎の種子」(1955, 1970)
〔E 北原白秋〕「昼見えぬ星」(1973)
〔F 江戸川乱歩〕「美への愛憎」(1973)/「香り高い闇」(1973)
〔G 五木寛之〕「現代の疾走者」(1972)
〈II 異端と幻想の文学〉
「日本の異色作家」(1964)/「久生十蘭論」(1970)/「戦争と久生十蘭」(1973)/「異次元の作家たち――小栗・夢野・久生」(1971)/「地球への流刑者――小栗虫太郎『二十世紀鉄仮面』『人外魔境』」(1969)/「悪夢の固まり――『夢野久作全集』」(1969)/「狂気のあかし―― 『ドグラ・マグラ』頌」(1969)/「異端の復権――久生・夢野・橘」(1974)/「廃園にて」(1971)/「金貨について」(1970)/「黒い水脈【みお】」(1970, 1973)
〈III カイン待望論〉
「カイン待望論」(1971)/「短編よ、よみがえれ」(1972)/「影の会のこと――乱歩から清張へ」(1967)/「そしらぬ顔の故郷――わが町・わが本」(1973)/「憎むこと・愛すること――私の読書遍歴」(1972)/「本との出会い」(1972)/「空しい音――愛読者をさがす登場人物」(1974)/「血紅の美酒――鏡花に寄せて」(1974)/「夢への扉」(1974)/「手ぶくろ」(1974)
〈IV 書評〉
「美と恐怖の塔――江口裕子著『エドガア・ポオ論考』(1969)/「フィクションの継目――富士正晴著『贋・久坂葉子伝』」(1970)/「孤独な将棋さし――ノサック著『わかってるわ』」(1970)/「朝霧の彼方に――『木々高太郎全集T』」(1970)/「生者の沈黙と死者の饒舌――渡辺温作品集『アンドロギュノスの裔』」(1971)/「美の系譜――松田修著『刺青・性・死』(1972)/「凍りついた時間――船山馨著『見知らぬ橋』」(1971)/「異端の美食家――中野美代子著『迷宮としての人間』」(1972)/「登攀を許さぬ峻峰――平畑・三谷編集『西東三鬼全句集』(1971)/「流刑地の友へ――『加藤郁乎句集』」(1971)/「戦争の日々の哀歓――山田風太郎著『滅失への青春』」(1973)/「痛ましい予言者――海野十三著『敗戦日記』」(1971)/「つまり、そういうこと――吉行淳之介著『湿った空乾いた空』」(1972)/「あとがき」(1975)

『地下を旅して』(1979)
〈I 地下を旅して〉
「地下を旅して」(1974)/「舌と鼻と」(1975)/「薔薇が、薔薇で……」(1975)/「金沢・東京・田端」(1975)/「悪夢者の呟き」(1974)/「鏡と影の世界―― わが“のすたるじあ”」(1976)/「カレイドスコープ」(1976)/「正義の味方」(1976)/「話しことばの詩・私見――話体と文体」(1979)/「ある冥さについて――近代と私」(1976)/「兄とレコードと友人たち」(1976)/「死者への手紙――手紙の楽しみ」(1976)/「木馬館周辺――見世物」(1977)/「「懶人【ロイアルト】」考」(1977)/「人形への惧【おそ】れ」(1977)/「点としての東京――東京の風景」(1978)
〈II 双点〉
「手紙たちの不運」(1978)/「交差する腕」(1978)/「逃げる男」(1978)/「猫車」(1978)/「カフカと鬼灯」(1978)/「梅林の嘆き」(1978)/「光る海」(1978)/「雪と嚏」(1978)/「月光浴」(1978)/「双子の時代」(1978)/「双面神」(1978)/「片雛」(1978)
〈III 作家と作品〉
「見えない星田三平氏」(1968)/「『天狗』頌――大坪砂男」(1972)/「プルーストの日々」(1974)/「本物の劣等生――鶴見俊輔」(1975)/「老いたるアリョーシャ――ドストエフスキー」(1975)/「ヘルマフロディットの幻――バルザック」(1976)/「ネッシーは浮上したか――ワイルド」(1976)/「枯野と十字架――竹久夢二」(1977)/「散文精神の城――メリメ」(1977)/「星たちの宴――稲垣足穂」(1977)/「新・江戸川乱歩論――孤独すぎる怪人」(1977)/「『瓶詰の地獄』解説――夢野久作」(1977)/「『人魚の嘆き・魔術師』解説――谷崎潤一郎」(1978)/「『乱れからくり』解説――泡坂妻夫」(1977)/「『美国【アメリカ】横断鉄路』書評――久生十蘭」(1975)/「『青蛾館』書評――寺山修司」(1975)/「『グアテマラ伝説集』書評――アストゥリアス」(1977)/「『記憶の遠近法』書評――澁澤龍彦」(1978)/「『評伝三島由紀夫』書評――佐伯彰一」(1978)
〈IV 対談・現代文学のフロンティア〉(1975)インタビュアー:田中淳一
「あとがき」(1979)

解説:川村湊/解題:本多正一
中井英夫全集付録2(「中井英夫と田端」近藤富枝、「般若心経と黄不動」池田清彦)



中井英夫

(ナカイヒデオ )

1922年東京生まれ。東京大学文学部中退。日本短歌社、角川書店で短歌誌編集に従事。1964年、塔晶夫の筆名で刊行されたアンチ・ミステリ『虚無への供物』は、探偵小説の歴史のみならず20世紀文学に金字塔を打ち立てることになった。1974年、『悪夢の骨牌』で第2回泉鏡花文学賞受賞。1993年歿。創元ライブラリ版『中井英夫全集』では、『黒鳥譚』『とらんぷ譚』以下の幻想耽美小説、『香りの時間』に始まる洒脱なエッセイ、戦中日記『彼方より』、詩篇・短歌論など多彩な業績がコンパクトに集成されている。