「川はどこから始まるのか、君は知っとるのかね?」──河川の形成についての問答を起点に、宇宙の恐るべき成り立ちを暴き出す表題作や、算盤(そろばん)とメモ用紙によってシミュレートされた世界の悲劇を描いた「予(あらかじ)め決定されている明日」など、初期の傑作群を中心に六編を集成。堅牢な論理の積み重ねによって、狂気に満ちた架空世界を築き上げる、『アリス殺し』の鬼才の原点がここに。
「予(あらかじ)め決定されている明日」
「空からの風が止む時」
「C市」
「時空争奪」
「完全・犯罪」
「クラリッサ殺し」
解説に代えて
小林泰三
(コバヤシヤスミ )1962年、京都府生まれ。大阪大学大学院修了。95年「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞し、デビュー。98年「海を見る人」が第10回SFマガジン読者賞(国内部門)を受賞し、同短編を表題作とした2002年刊の短編集は、第22回日本SF大賞候補作となった『AΩ(アルファ・オメガ)』に続き、第23回日本SF大賞候補作となる。『天獄と地国』、『ウルトラマンF』でそれぞれ第43回、第48回星雲賞(日本長編部門)を、また、『アリス殺し』で2014年啓文堂書店文芸書大賞を受賞する。他に『大きな森の小さな密室』『完全・犯罪』『クララ殺し』『ドロシイ殺し』『ティンカー・ベル殺し』『殺人鬼にまつわる備忘録』『人外サーカス』『未来からの脱出』などの著書がある。2020年没。2021年、第41回日本SF大賞功績賞が贈られた。