猫はつっと顔をあげると、耳をレーダーのように動かし、アーモンド形の瞳を光らせた。右に左にすいっすいっと動くしっぽ、リスの尾のように毛がふさふさしたしっぽに、わたしは目を奪われた。猫が致死性の病気を媒介するとして、一部の企業に厳密に管理される近未来世界。ジェイドは庭に迷い込んだ一匹の猫に出会った。役所に届け出れば殺されてしまう。ジェイドは猫を隠れて飼うことを決意する……。猫への愛に溢れた瑞々しい物語。訳者あとがき=赤尾秀子
赤尾秀子
(アカオヒデコ )津田塾大学数学科卒業。英米文学翻訳家。主な訳書に、レッキー《叛逆航路》シリーズ、ハインライン『天翔る少女』、マキャフリー『だれも猫には気づかない』、マキャフリー&ラッキー『旅立つ船』、ヴィンジ『レインボーズ・エンド』ほか多数。