20年以上続いた第1次核戦争が終結したのち、人類は世界連邦政府を樹立し、重要事項の決定を巨大コンピュータ〈ヴァルカン3号〉に委ねた。極秘とされるその設置場所を知るのは統轄弁務官ディルただ一人。だが、こうした体制に反対するフィールズ大師は〈癒しの道〉教団を率いて政府組織に叛旗を翻した。ディルは早々に大師の一人娘を管理下に置くが……。ディック最後の本邦初訳長編SF! 解説=牧眞司
フィリップ・K・ディック
アメリカの作家。1928年生まれ。1952年に短編作家として出発し、その後長編を矢つぎばやに発表、「現代で最も重要なSF作家の一人」と呼ばれるまでになる。ゆるぎない日常社会への不信、崩壊してゆく現実感覚を一貫して描き続けた。代表作に『ユービック』『火星のタイム・スリップ』『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』『スキャナー・ダークリー』『ヴァリス』など。1982年歿。
佐藤龍雄
(サトウタツオ )1954年生まれ。幻想文学翻訳家。主な訳書に、ワイリー&バーマー『地球最後の日』、ディック『あなたをつくります』『未来医師』、シュート『渚にて』ほか多数。