命を助けた若者に、つらい人生を歩んできたゆえの奇怪な風貌を罵倒され、心が折れてしまった老姉妹。敷地内に薄暗い洞穴を持つ金持ち夫婦に雇われて、“隠者”となった男。“蝶の修理屋”を志し、手術道具を使って標本の蝶を蘇らせようとする少年。──ブッカー賞最終候補作の著者による、日常と異常の境界を越えてしまい、異様な事態を引き起こした人々を描いた珠玉の短編集。解説=石井千湖
「ピアース姉妹」
「眠れる少年」
「地下をゆく舟」
「蝶の修理屋」
「隠者求む」
「宇宙人にさらわれた」
「骨集めの娘」
「もはや跡形もなく」
「川を渡る」
「ボタン泥棒」
ミック・ジャクソン
1960年、イギリス生まれ。20代の頃はアメリカのロックバンドで活躍、その後短編映画の監督・脚本を手がけ、1997年に『穴掘り公爵』で作家デビュー。同書はイギリス最高の文学賞であるブッカー賞と、イギリスまたはアイルランド在住の作家に与えられるウィットブレッド賞(現在はコスタ賞)デビュー作賞それぞれの最終候補作となった。主な著作に『こうしてイギリスから熊がいなくなりました』、Five Boys(2002)、The Widow’s Tale(2010)などがある。
田内志文
(タウチシモン )文筆家、スヌーカー選手。コナリー『失われたものたちの本』『失われたものたちの国』、ジャクソン『10の奇妙な話』、スティーヴンソン『新訳 ジキル博士とハイド氏』、オーウェル『1984』など訳書多数。