これは、イギリスで絶滅してしまった熊に捧げる、大人のための寓話です。
昔々、森を徘徊する悪魔だと恐れられた「精霊熊」。死者のための供物を食べたせいで、故人の罪を引き受けてしまった「罪喰い熊」。人間の服を着て綱渡りをさせられた「サーカスの熊」。ロンドンの下水道に閉じこめられ、町の汚物を川まで流す労役につかされた「下水熊」。人間に紛れて潜水士として働く「市民熊」。ブッカー賞最終候補作家が、皮肉とユーモアを交えて独特の筆致で描く8つの奇妙な熊の物語。訳者あとがき=田内志文
ミック・ジャクソン
1960年、イギリス生まれ。20代の頃はアメリカのロックバンドで活躍、その後短編映画の監督・脚本を手がけ、1997年に『穴掘り公爵』で作家デビュー。同書はイギリス最高の文学賞であるブッカー賞と、イギリスまたはアイルランド在住の作家に与えられるウィットブレッド賞(現在はコスタ賞)デビュー作賞それぞれの最終候補作となった。主な著作に『こうしてイギリスから熊がいなくなりました』、Five Boys(2002)、The Widow’s Tale(2010)などがある。
田内志文
(タウチシモン )文筆家、スヌーカー選手。コナリー『失われたものたちの本』『失われたものたちの国』、ジャクソン『10の奇妙な話』、スティーヴンソン『新訳 ジキル博士とハイド氏』、オーウェル『1984』など訳書多数。