ラヴクラフトは数多くの添削や共作を手がけ、ほぼ全面改稿に近いほど手を加えたものもある。その一部は全集に収録されたが、今回は程度の多少にかかわらず、ラヴクラフトの手の入った作品を執筆年代順に別巻2冊に網羅した。上巻には、連続殺人鬼の異常心理をあつかった「最愛の死者」、地獄絵の恐怖を描く「メドゥサの髪」ほか12編を収める。訳者あとがき=大瀧啓裕
イリザベス・バークリイ「這い寄る混沌」
ソウニャ・H・グリーン「マーティン浜辺の恐怖」
C・M・エディ・ジュニア「灰」
C・M・エディ・ジュニア「幽霊を喰らうもの」
C・M・エディ・ジュニア「最愛の死者」
C・M・エディ・ジュニア「見えず、聞こえず、語れずとも」
ウィルフリド・ブランチ・トールマン「二本の黒い壜」
アドルフェ・デ・カストロ「最後の検査」
ズィーリア・ビショップ「イグの呪い」
アドルフェ・デ・カストロ「電気処刑器」
ズィーリア・ビショップ「メドゥサの髪」
ヘンリイ・S・ホワイトヘッド「罠」
H・P・ラヴクラフト
アメリカの作家。1890年生。ロバート・E・ハワードやクラーク・アシュトン・スミスとともに、怪奇小説専門誌〈ウィアード・テイルズ〉で活躍したが、生前は不遇だった。1937年歿。死後の再評価で人気が高まり、現代に至っても、なおカルト的な影響力を誇っている。旧来の怪奇小説の枠組を大きく拡げて、宇宙的恐怖にまで高めた〈クトゥルー神話大系〉を創始した。《ラヴクラフト全集》で、その全貌に触れることができる。
大瀧啓裕
(オオタキケイスケ )1952年、大阪市生まれ。著書に『魔法の本箱』『エヴァンゲリオンの夢』、訳書にラヴクラフト『文学における超自然の恐怖』、ラッセル『悪魔の系譜』、スミス『ゾティーク幻妖怪異譚』『ヒュペルボレオス極北神怪譚』『アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚』、オブライエン『金剛石のレンズ』、ウィルスン〈始末屋ジャック〉シリーズ他多数。