男の子はうつ伏せに倒れ、体の下の血溜まりは凍り始めていた。アイスランド人を父に、タイ人を母にもつ彼は、両親の離婚後母と兄と共にレイキャヴィクのこの界隈に越してきた。殺人の動機は人種差別? エーレンデュルは、住居や学校を中心に捜査を始めるが……。CWAインターナショナルダガー賞最終候補作。北欧ミステリの巨人が現代社会の問題に切りこむ、シリーズ第5弾。訳者あとがき=柳沢由実子
アーナルデュル・インドリダソン
1961年アイスランドの首都レイキャヴィク生まれ。父親は高名な作家インドリディ・G・トーステンソン。アイスランド大学で歴史学と映画を専攻し、卒業後新聞社に就職。その後、フリーの映画評論家になる。1997年にレイキャヴィク警察の犯罪捜査官エーレンデュルを主人公とするシリーズ第一作Synir duftsinsで作家デビュー。3作目にあたる『湿地』と次の『緑衣の女』で2年連続してガラスの鍵賞を受賞。『緑衣の女』では、英国のCWAゴールドダガー賞も受賞している。
柳沢由実子
(ヤナギサワユミコ )1943年岩手県生まれ。上智大学文学部英文学科卒業。ストックホルム大学スウェーデン語科修了。主な訳書に、インドリダソン『湿地』『緑衣の女』『声』『湖の男』『厳寒の町』『印(サイン)』、ヘニング・マンケル『殺人者の顔』『目くらましの道』『北京から来た男』、マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー『刑事マルティン・ベック 笑う警官』、ドロシー・ギルマン『悲しみは早馬に乗って』、アリス・ウォーカー『勇敢な娘たちに』、カーリン・アルヴテーゲン『満開の栗の木』などがある。