20世紀初頭のバルセロナ。幼い子どもが何人も失踪し、子どもをさらって貪(むさぼ)る化け物の仕業だという噂が立つ。今日また一人、新たな子が姿を消し、頸動脈(けいどうみやく)を?みちぎられた男の死体まで発見された。その化け物の名はエンリケタ。人間の魂を刈り取る全知の存在が、「吸血鬼」と呼ばれた稀代(きたい)の悪女の恐ろしさを語り尽くす。犯罪捜査官の著者が、犯罪者の実話に材を得て描く戦慄の物語。訳者あとがき=白川貴子
マルク・パストル
1977年スペイン、バルセロナ生まれ。犯罪学、犯罪取締政策の学位をもち、カタルーニャ自治州警察(Mossos d?Esquadra)の科学捜査課に所属する警察官でもある。これまでにSF、ゴシック小説など幅広いジャンルで小説5作を発表。2008年に発表された『悪女』は2作目にあたり、自治州警察主催の、カタルーニャ語で書かれた小説が対象となる犯罪文学賞(Premio Crims de Tinta)を受賞した。
白川貴子
(シラカワタカコ )翻訳家。スペイン語の訳書に、ダイナ・チャヴィアノ『ハバナ奇譚』、フリア・ナバロ『聖骸布血盟』、ハビエル・マリアス『執着』、ドロレス・レドンド『バサジャウンの影』がある。