ある小国の元首相の手記を南アフリカからロンドンの出版社に届けてほしいと旧友から頼まれたケイド。実は頼み事はもうひとつあった。イギリスでも有数の大邸宅チムニーズ館に滞在中の婦人に、あるものを届けてほしいというのだ。折しもチムニーズ館では政府の高官や経済界の大物が集まるなか殺人事件が発生、ケイドも巻き込まれるが……。ミステリの女王の冒険活劇、新訳で復活。解説=上條ひろみ
(初刊時タイトル『チムニーズ荘の秘密』を新訳・改題)
アガサ・クリスティ
イギリスの作家。1890年生まれ。1920年に『スタイルズ荘の怪事件』でデビューして以来、長編と短編集あわせて100冊を超す作品を発表した。巧妙な着想と錯綜したプロット構成に、独創的なトリックの加わった『アクロイド殺害事件』や『オリエント急行の殺人』『ABC殺人事件』といった多くの作品が、古典的名作としての評価を確立している。71年には長年の功績により、大英帝国勲章(DBE)を授与された。〈ミステリの女王〉たる彼女の創造した名探偵には、エルキュール・ポワロやミス・マープルなどがいる。76年没。
山田順子
(ヤマダジュンコ )1948年福岡県生まれ。立教大学社会学部社会学科卒業。主な訳書に、アーモンド『肩胛骨は翼のなごり』、キング『スタンド・バイ・ミー』、クリスティ『ミス・マープル最初の事件』、リグズ『ハヤブサが守る家』、プルマン『マハラジャのルビー』など。