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スコットランドの辺境に越してきたインド帰りの陸軍少将が、クルンバー館に高塀を繞らし食糧を買い込んで籠城の構えを見せる。家人を禁足し訪客を峻拒する将軍の振舞いは、人智及ばぬ危殆に瀕するが故だという。運命の10月5日が迫る頃、突如海は荒れ風は猛って帆船ベリンダ号が難破。嵐の中にも威風けざやぐ3人のインド僧こそ、将軍のもとへ遣わされた宿悪の清算者であった!――表題作『クルンバーの謎』など5編を収録。シャーロック・ホームズ譚『四人の署名』にも窺える東洋趣味を楽しむ、ドイル・コレクション第3集。解説=北原尚彦
「競売ナンバー二四九」
「トトの指輪」
「血の石の秘儀」
「茶色い手」
「クルンバーの謎」
アーサー・コナン・ドイル
1859年イギリス生まれ。開業医をしていたがはかばかしくなく、生活のために筆をとり、1887年発表の『緋色の研究』で名探偵シャーロック・ホームズを創造。1891年から〈ストランド・マガジン〉に連載したホームズが登場する短編で圧倒的な人気を集め、一躍作家的地位を確立した。また、チャレンジャー教授の活躍する『失われた世界』等のSF、『勇将ジェラールの回想』等の歴史小説にもすぐれた作品を残し、それぞれの分野の古典として今なお愛読されている。1930年没。
北原尚彦
(キタハラナオヒコ )1962年東京都生まれ。青山学院大学理工学部物理学科卒。作家、評論家、翻訳家。日本推理作家協会員。横田順彌、長山靖生、牧眞司ら各氏を擁する日本古典SF研究会では会長をつとめる。〈本の雑誌〉ほかで古書関係の研究記事を長年にわたり執筆。主な著作に、短編集『首吊少女亭』(出版芸術社)ほか。古本エッセイに『SF奇書天外』『SF奇書コレクション』(東京創元社)、『シャーロック・ホームズ万華鏡』(本の雑誌社)、『新刊!古本文庫』『奇天烈!古本漂流記』(以上、ちくま文庫)など、またSF研究書に『SF万国博覧会』(青弓社)がある。主な訳書に、〈ドイル傑作集〉全5巻(共編・共訳、創元推理文庫)、ミルン他『シャーロック・ホームズの栄冠』(論創社)ほか多数。
西崎憲
(ニシザキケン )1955年青森県生まれ。作曲家、翻訳家、作家、アンソロジスト。2002年に『世界の果ての庭』で第14回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し作家デビュー。主な編訳書に『短篇小説日和 英国異色傑作選』『怪奇小説日和 黄金時代傑作選』、主な訳書としてチェスタトン『四人の申し分なき重罪人』、コッパード『郵便局と蛇』、バークリー『第二の銃声』、『ヴァージニア・ウルフ短篇集』がある。著書に『世界の果ての庭』、歌集『ビットとデシベル』(フラワーしげる名義)など。15年には日本翻訳大賞を創設したほか、16年より文学ムック「たべるのがおそい」の編集長を務めるなど、多様な活動を展開している。