歴史上から姿を消した謎の民族ハザールに関する事典の形をとった前代未聞の物語集。キリスト教、イスラーム教、ユダヤ教の交錯する45項目は、通して読むもよし、関連項目の拾い読みもよし、たまたま開いた項目を一つ読むもよし、読者の意のまま。男女両版の違いはわずか10行。どちらの版を選ばれますか? 解説=沼野充義
ミロラド・パヴィチ
1929年10月15日ベオグラード生まれ。2009年11月30日同市で死去。セルビアの17?19世紀文学を専門とする文学研究者で、ノヴィサド大学およびベオグラード大学で教授をつとめた。『バロック期セルビア文学の歴史』は研究者としての代表作。詩が出発点である創作の分野では、本書の他に『風の裏側』『帝都最後の恋』など奇想の宝庫とも言うべき作品多数。
工藤幸雄
(クドウユキオ )1925年、大連生まれ。ロシア・ポーランド文学者、詩人、翻訳家。東京大学仏文科卒業。アメリカのインディアナ大学大学院修士課程中退後、共同通信社外信部記者、ワルシャワ大学日本学科講師を経て、1975年に帰国。多摩美術大学教授となる。訳書に『ブルーノ・シュルツ全集』(第50回読売文学賞〈研究・翻訳賞〉受賞)、W・ゴンブロヴィッチ、I・B・シンガー、C・ミウォシュ、M・パヴィチ等、訳書多数。著書に『ワルシャワの七年』『ぼくの翻訳人生』等がある。2008年没。