東京・赤羽の路上で資産家が殺害された。赤羽署初の女性刑事・黒光亜樹は、本庁から来た癖の強い先輩刑事とコンビを組まされ、彼と対立しながらも懸命に捜査を続けるが、なかなか容疑者は浮かんでこない。同じ頃、松山大学マンドリンクラブのOG・国見冴子は、仲間二人と母校の取り壊し予定の部室棟を訪れていた。すると部室の黒板に、三十年前に失踪したクラブのメンバー・高木圭一郎が最近書き残したと思しき「その時鐘は鳴り響く」を見つけて驚く。それは四年生の夏合宿で事故死した篠塚瞳を含め、五人の間で頻繁に言い交わしていた言葉だった。瞳の死後に失踪した高木は、なぜ今になって部室を訪れ、この言葉を残したのか? 冴子たちは当時の事故について調べ始めるが……。
宇佐美まこと
(ウサミマコト )1957年愛媛県生まれ。2006年「るんびにの子供」で第1回『幽』怪談文学賞〈短編部門〉大賞を受賞し、07年に同作を表題作とした短編集でデビュー。17年『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞〈長編及び連作短編集部門〉を受賞。19年刊行の『展望塔のラプンツェル』が「本の雑誌が選ぶ2019年度ベスト10」第1位になり、第33回山本周五郎賞候補に選ばれる。20年には『ボニン浄土』が第23回大藪春彦賞候補になる。主な著書に『羊は安らかに草を食み』『子供は怖い夢を見る』『月の光の届く距離』『逆転のバラッド』『鳥啼き魚の目は泪』『誰かがジョーカーをひく』などがある。