旧知のNPO法人から、荒井に民事裁判の法廷通訳をしてほしいという依頼が舞い込んだ。原告はろう者の女性で、勤め先を「雇用差別」で訴えているという。かつて似たような立場を経験した荒井の脳裏に、当時の苦い記憶が蘇る。法廷ではあくまで冷静に自分の務めを果たそうとするのだが――(「法廷のさざめき」)。コーダである手話通訳士・荒井尚人が関わる四つの事件を描く、温かいまなざしに満ちた連作ミステリ。『デフ・ヴォイス』『龍の耳を君に デフ・ヴォイス新章』に連なるシリーズ最新作。
「慟哭は聴こえない」
「クール・サイレント」
「静かな男」
「法廷のさざめき」
丸山正樹
(マルヤママサキ )1961年東京都生まれ。早稲田大学卒。シナリオライターとして活躍ののち、松本清張賞に投じた『デフ・ヴォイス』でデビュー。同作は書評サイト「読書メーター」で話題となり、シリーズ第2弾『龍の耳を君に』、第3弾『慟哭は聴こえない』、第4弾『わたしのいないテーブルで』、シリーズスピンオフ『刑事何森 孤高の相貌』『水まきジイサンと図書館の王女さま』も好評を博す。2021年『ワンダフル・ライフ』で読書メーター OF THE YEAR 2021に選ばれる。2022年『龍の耳を君に』が第17回酒飲み書店員大賞を受賞。他の著作に『漂う子』『ウェルカム・ホーム!』『キッズ・アー・オールライト』がある。