脳のほとんどは潜在意識であり、“自分”という意識は判断を下す主体ではなくその結果、つまりただのまぼろしでしかない。ヌミナスは脳を再編し、摂取者にとっては現実そのものとしか思えない“神”の幻覚を作り上げる――だが、“自分”という意識そのものが幻想でしかないのなら、“神”が幻覚だと言うことにどんな意味があるのだろう? ヌミナス流通の真相を追うライダは、驚愕の事実に到達する……。新世代の傑作脳科学SF。解説=橋本輝幸
ダリル・グレゴリイ
1965年シカゴ生まれのSF/ファンタジイ作家。1988年にクラリオン・ワークショップを卒業後、1990年に作家デビュー。以来英語教師、プログラマーなどを兼業しつつ、2004年ごろから精力的に短編を発表するようになる。初長編Pandemonium(2008)で著者初のファンタジイ長編を対象としたクロフォード賞を、中長編"We Are All Completely Fine"(2014)で世界幻想文学大賞を受賞している。
『迷宮の天使』(Afterparty, 2013)著者4作目の長編であり、NPR年間ベスト小説、カーカス・レビュー誌年間ベストSF/ファンタジイ長編に選出された。
小野田和子
(オノダカズコ )1951年生まれ。青山学院大学文学部英米文学科卒業。訳書に、アシモフ『夜来たる[長編版]』、クラーク『イルカの島』、ジェミシン『第五の季節』『オベリスクの門』、ウィアー『火星の人』他多数。