●長谷敏司氏推薦――「硬質な言葉とイメージを磨き上げ、情緒へと消化したアクションSFの逸品。」
〈共和国〉の緑化政策船団の護衛のため、航空上の脅威となる人狗(ヒトイヌ)に対抗する生体兵器として生み出された対狗衞仕(たいくえいし)の員(エン)。数百年を戦いと孤独のうちに費やした彼女は、情報の涸れ果てた互聯網(ネツト)上を彷徨う中で、cyと名乗る人物に呼びかけられる。豊かな知識を所有する彼との対話に喜びを見出す員。だが、共和国が散布する細菌兵器の脅威が、cyに迫っていた。硬質な叙情に満ちた本格SF。解説=牧眞司
結城充考
(ユウキミツタカ )1970年、香川県生まれ。2004年、『奇蹟の表現』で第11回電撃小説大賞銀賞を受賞し、デビュー。2008年、『プラ・バロック』で第12回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。2010年、「雨が降る頃」が第63回日本推理作家協会賞短編部門の候補となった。他の著作に『クロム・ジョウ』『狼のようなイルマ』『アルゴリズム・キル』などがある。