その途轍もない〈巨人〉は一定周期で現れ、人々の上をただ歩いてゆく、進化の輪から完全に独立した存在だった──圧倒的な筆力で描かれた表題作、どことも知れぬ宿で二人の人物が酒を酌み交わす「蒼い旅篭で」、雪山で遭難した男の幻想譚「山を生んだ男」など、宇宙と人間の有り様を凝縮した傑作や《サイコダイバー》シリーズの原型作「てめえらそこをどきやがれ!」の他、幻のデビュー作「カエルの死」にはじまる傑作タイポグラフィクション(活字絵物語)の数々を収録。著者まえがき=夢枕獏/解説=大倉貴之
「木犀のひと」
「どむ伝」
「魔性」
「わらし」
「蒼い旅籠で」
「消えた男」
「山を生んだ男」
「千日手」
「てめえらそこをどきやがれ!」
「遙かなる巨神」
タイポグラフィクション
「カエルの死」
「ローズマリーの赤ちゃん」
「走る人」
「泣きじゃくる子供」
「そして誰もいなくなった」
「終電の事故」
「崩壊のプロセス」
「伝言板」
「どんたとぴ」
夢枕獏
(ユメマクラバク )1951年神奈川県小田原市生まれ。東海大学文学部卒。1977年、〈奇想天外〉誌に「カエルの死」が掲載されデビュー。1989年の『上弦の月を喰べる獅子』で第10回日本SF大賞、第21回星雲賞を、1997年の『神々の山嶺』で第11回柴田錬三郎賞を受賞。他の作品に〈キマイラ・吼〉〈サイコダイバー〉〈陰陽師〉等のシリーズ、『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』など。