ホラー・ジャパネスクと怪談実話の興隆で幕を開けた平成の怪奇小説は、多くの人気作家や異色作家を巻きこみながら、幻想と怪奇と恐怖の絢爛(けんらん)たる坩堝(るつぼ)を形成してゆく。平成の三十余年間に生み出された名作を精選して、全三巻に収録。最高の作家たちによる至高の怪奇小説傑作選の第一巻は、平成元年発表の吉本ばなな「ある体験」から10年の宮部みゆき「布団部屋」まで全十五作。
吉本ばなな「ある体験」
菊地秀行「墓碑銘〈新宿〉」
赤江瀑「光堂」
日影丈吉「角の家」
吉田知子「お供え」
小池真理子「命日」
坂東眞砂子「正月女」
北村薫「百物語」
皆川博子「文月の使者」
松浦寿輝「千日手」
霜島ケイ「家──魔象」
篠田節子「静かな黄昏の国」
夢枕獏「抱きあい心中」
加門七海「すみだ川」
宮部みゆき「布団部屋」
東雅夫
(ヒガシマサオ )1958年神奈川県生まれ。早稲田大学卒。文芸評論家、アンソロジスト。『幻想文学』と『幽』の編集長を歴任。著書に『遠野物語と怪談の時代』(日本推理作家協会賞受賞)、『百物語の怪談史』ほか、編纂書に『日本怪奇小説傑作集』全三巻(紀田順一郎と共編)、『文豪妖怪名作選』『猫のまぼろし、猫のまどわし』ほか多数がある。