今なお多くの作家から敬愛される幻想小説の巨星・赤江瀑。その多彩な業績のなかから稀代のアンソロジストが厳選した珠玉を全三巻に集成する。第一巻には、泉鏡花文学賞受賞作『海峽──この水の無明の眞秀(まほ)ろば』、初文庫化となる円熟の傑作『星踊る綺羅の鳴く川』、幻のオカルティック・ロマン『上空の城』と、赤江文学の精華となる三編にエッセイとロング・インタビューを併載。著者あとがき=赤江瀑/解説=東雅夫
「海峽──この水の無明の眞秀(まほ)ろば」
「星踊る綺羅の鳴く川」
「上空の城」
赤江瀑
(アカエバク )1933年山口県生まれ。日本大学藝術学部演劇科中退。在学中は詩の同人誌「詩世紀」に参加。中退後は放送作家として活躍していたが、70年 「ニジンスキーの手」で第15回小説現代新人賞を受賞し、作家デビューを果たす。以降精力的に短編、長編を発表し、73年「罪喰い」が第69回直木賞候補となる。74年『オイディプスの刃』で第1回角川小説賞を受賞。84年『海峽──この水の無明の眞秀(まほ)ろば』『八雲が殺した』の両作品が第12回泉鏡花文学賞を受賞。美や芸術に潜む魔を独自の筆致で描き、現在でも熱狂的な支持を得ている。2012年没。
東雅夫
(ヒガシマサオ )1958年神奈川県生まれ。早稲田大学卒。文芸評論家、アンソロジスト。『幻想文学』と『幽』の編集長を歴任。著書に『遠野物語と怪談の時代』(日本推理作家協会賞受賞)、『百物語の怪談史』ほか、編纂書に『日本怪奇小説傑作集』全三巻(紀田順一郎と共編)、『文豪妖怪名作選』『猫のまぼろし、猫のまどわし』ほか多数がある。