相次ぐ不幸な出来事の結果、ハンドレッズ領主館はますます寂れていた。エアーズ一家の行く末を案じるファラデー医師は、館への訪問回数を増やし、やがて医師と令嬢キャロラインは、深まる交流の中で互いを慕う感情を育んでいく。しかし、ふたりの恋が不器用に進行する間も、屋敷では悲劇の連鎖が止まることはなかった……彼らを追いつめているのは誰? ウォーターズが美しくも残酷に描く、ある領主一家の滅びの物語。解説=三橋曉
*第5位『ミステリが読みたい!2011年版』海外篇/歴史部門
*第7位『このミステリーがすごい!2011年版』海外編
*第7位〈週刊文春〉2010ミステリーベスト10 海外部門
サラ・ウォーターズ
1966年に英国のウェールズに生まれ、ロンドンで育つ。98年に TIPPING THE VELVET で小説家デビュー。翌99年に発表した第2長編『半身』が大評判となり、アメリカ図書館協会賞やサンデー・タイムズの若手作家年間最優秀賞、さらに、35歳以下の作家を対象とするサマセット・モーム賞(イアン・マキューアン、ジュリアン・バーンズ、サルマン・ラシュディ、ピーター・アクロイドなど錚々たる顔ぶれを輩出した)に輝き、一躍英国文壇の期待の星となった。他の作品に『荊(いばら)の城』(上下)、『夜愁(やしゅう)』(上下)。
中村有希
(ナカムラユキ )1968年生まれ。1990年東京外国語大学卒。英米文学翻訳家。訳書に、ソーヤー『老人たちの生活と推理』、マゴーン『騙し絵の檻』、ウォーターズ『半身』『荊の城』、ヴィエッツ『死ぬまでお買物』、クイーン『ローマ帽子の謎』など。