人気作家ジョフリーの邸宅〈ガーストン館〉に招かれた幼馴染のモーリス。最近様子のおかしいジョフリーを心配する家族に懇願されての来訪だった。彼は兄ライオネルから半年にわたり脅迫を受けており、加えて自身の日記の出版計画が、館の複雑な人間関係に強い緊張をもたらしていた。そして憎み合う兄弟は、暴力の痕跡を残す部屋から忽然と姿を消した。英国本格の妙味溢れる佳品。訳者あとがき=中村有希
*第1位『2009本格ミステリ・ベスト10』/海外ランキング
D・M・ディヴァイン
1920年スコットランド生まれ。大学職員時代、英国有数のミステリ出版社コリンズ社の探偵小説コンクールに投じた『兄の殺人者』がアガサ・クリスティから高く評価され、執筆活動に入る。デビュー以降もアントニイ・バウチャー、H・R・F・キーティングら具眼の士より絶賛される、極めて完成度の高い本格作品をものした。死後出版の『ウォリス家の殺人』を含め、その生涯で13作の推理小説を発表した。1980年没。
中村有希
(ナカムラユキ )1968年生まれ。1990年東京外国語大学卒。英米文学翻訳家。訳書に、ソーヤー『老人たちの生活と推理』、マゴーン『騙し絵の檻』、ウォーターズ『半身』『荊の城』、ヴィエッツ『死ぬまでお買物』、クイーン『ローマ帽子の謎』など。