アクランド英国軍中尉はイラクに派遣され、爆弾で頭部と顔面に重傷を負った。病院で昏睡(こんすい)から目覚めた彼は暴力をふるい、極端な女性嫌悪を示して周囲を戸惑わせる。除隊した彼はロンドンに住むが、ある夜警察に拘束されてしまう。近隣では、軍歴のある一人暮らしの男が自宅で殴殺される事件が続発しており、アクランドは尋問されるが……。巧みな心理描写で紡(つむ)がれる傑作サスペンス。解説=三橋暁
*第6位〈ハヤカワ・ミステリマガジン〉ミステリが読みたい! 海外篇
*第7位『2021本格ミステリ・ベスト10』海外篇
ミネット・ウォルターズ
1949年、イギリス生まれ。幼少期から頭抜けた読書家であり、雑誌編集者を経て小説家となる。1992年にミステリ第1作『氷の家』を発表。いきなり英国推理作家協会(CWA)最優秀新人賞を獲得する。続いて第2作『女彫刻家』でアメリカ探偵作家クラブ(MWA)のエドガー賞長編賞、マカヴィティ賞長編賞受賞。1994年『鉄の枷』で、2003年『病める狐』でCWAゴールド・ダガー賞を受賞。名実ともに現代を代表する〈英国ミステリの女王〉として活躍している。
成川裕子
(ナリカワヒロコ )1951年沖縄に生まれる。1975年香川大学経済学部卒業。英米文学翻訳家。主な訳書にウォルターズ「氷の家」「病める狐」「遮断地区」「悪魔の羽根」「カメレオンの影」、フォッスム「湖のほとりで」「晴れた日の森に死す」など。