*第9位『IN★POCKET』2012年文庫翻訳ミステリー・ベスト10/翻訳家&評論家部門
女は裸で波間にただよっていた。脳裏をよぎるのは、陵辱されたことではなく手指の骨を折られたことだった。──そして小石の浜で遺体が見つかる。被害者は長時間泳いだ末に力尽き、溺死していた。一方、死体発見現場から数キロ離れた港町では三歳になる被害者の娘が保護される。なぜ犯人は母親を殺したのに娘を無傷で解放したのか? なぜ、海を恐れ船に乗らなかった女性が溺死したのか? 現代英国ミステリの女王が放つ稀代の雄篇。解説=杉江松恋
ミネット・ウォルターズ
1949年、イギリス生まれ。幼少期から頭抜けた読書家であり、雑誌編集者を経て小説家となる。1992年にミステリ第1作『氷の家』を発表。いきなり英国推理作家協会(CWA)最優秀新人賞を獲得する。続いて第2作『女彫刻家』でアメリカ探偵作家クラブ(MWA)のエドガー賞長編賞、マカヴィティ賞長編賞受賞。1994年『鉄の枷』で、2003年『病める狐』でCWAゴールド・ダガー賞を受賞。名実ともに現代を代表する〈英国ミステリの女王〉として活躍している。
成川裕子
(ナリカワヒロコ )1951年沖縄に生まれる。1975年香川大学経済学部卒業。英米文学翻訳家。主な訳書にウォルターズ「氷の家」「病める狐」「遮断地区」「悪魔の羽根」「カメレオンの影」、フォッスム「湖のほとりで」「晴れた日の森に死す」など。