宇宙で生物の「渡り」を研究する日本人と、春節に地球へと帰省する習慣を持つ華人のパートナー。それぞれの選択を描いた表題作ほか、薩摩(さつま)藩に雇われ江戸総攻撃に臨む屍兵遣いの数奇な人生を綴る「従卒トム」、大国による侵略の危機に晒される国境近くの難民キャンプで感染症対策に挑むエンジニアの闘い「距離の嘘」、軌道作業ステーションに就職した奄美(あまみ)の巫女(ユタ)が遭遇する宇宙的脅威「祖母の龍」など、国内外で発表した11編を収録。各編に書き下ろしの著者解題を付す。
テクノロジーと人類への希望を描く傑作SF短編集。解説=勝山海百合
「ヴァンテアン」
「従卒トム」
「おうむの夢と操り人形」
「まるで渡り鳥のように」
「晴れあがる銀河」
「距離の嘘」
「羽を震わせて言おう、ハロー!」
「海を流れる川の先」
「落下の果てに」
「読書家アリス」
「祖母の龍」
藤井太洋
(フジイタイヨウ )1971年鹿児島県奄美大島生まれ。2012年、電子書籍のセルフ・パブリッシングで発表した『Gene Mapper』が注目を集めデビュー。15年に『オービタル・クラウド』で第35回日本SF大賞と第46回星雲賞日本長編部門を、19年には『ハロー・ワールド』で第40回吉川英治文学新人賞を受賞。22年には『マン・カインド』で二度目の星雲賞日本長編部門を受賞している。他の著作に『公正的戦闘規範』『東京の子』『第二開国』『オーグメンテッド・スカイ』などがある。