ある日、兄弟が森で穴に落ちてしまった。深さ7メートルの穴からどうしても出られず、木の根や虫を食べて何か月も極限の環境を生き延びようとする。外界から遮断された小さな世界で、弟は現実と怪奇と幻想が渾然一体となった、めくるめく幻覚を見はじめる……。名も年もわからない兄弟は、なぜ穴に落ちたのか? なぜ章番号が素数のみなのか? 幻覚に織り交ぜられた暗号とは? 寓意と象徴に彩られた不思議な物語は、読後、驚愕とともに力強い感動をもたらす。スペイン版『星の王子さま』であり、暗黒時代を生きる大人のための寓話。訳者あとがき=白川貴子
イバン・レピラ
1978年、スペインのバスク州ビルバオ生まれ。広告、グラフィック・デザイン、編集などの仕事に携わったのち、2012年にデビュー作となるUna comedia canallaを発表。2作目にあたる『深い穴に落ちてしまった』は、本国をはじめフランス、イギリスなどで絶賛された。主な著作にPrólogo para una guerra(2017)、El aliado(2019)などがある。
白川貴子
(シラカワタカコ )翻訳家。スペイン語の訳書に、ダイナ・チャヴィアノ『ハバナ奇譚』、フリア・ナバロ『聖骸布血盟』、ハビエル・マリアス『執着』、ドロレス・レドンド『バサジャウンの影』がある。