ちょっぴり不気味で美しい、不思議なフェアリーテイル
クリス・ウッディング『ポイズン』
創元ブックランド

ポイズン・上
 物語の舞台は妖精やトロール、ゴーレムなど、いくつもの種族がそれぞれに支配する界が存在している不思議な世界。人間は大昔の戦いで衰退し、人間の世界のほとんどを妖精に支配されています。残った人間たちは山間や湿地帯など危険で住みにくいところに集落をつくり、運命のきびしさに耐えながら細々と暮らしている有り様。

 そんな村のひとつ、毒をもつ生物がたくさん棲む〈黒の湿地帯〉にポイズンという名の少女が住んでいました。人の好い父、ポイズンと仲の悪い継母、そして幼い妹との4人暮らし。でも、ポイズンは与えられた運命に諾々と従い、過酷な暮らしにすっかり気力を奪われたようになっている村の生活になじめず、なにかというと反発していた。

ポイズン そんなある日、幼い妹が妖精の手先スケアクロウにさらわれ、後に残されたのは不気味な取り替え子(チェンジリング)。他の人々のように、これも運命とあきらめることがどうしてもできないポイズンは、妹と取り戻すべく住み慣れた故郷をあとに妖精の国を目指して旅立つ。
 旅の道連れは一匹狼の精霊採り、ブラム。

 高くそびえる崖の上に建つ街シールドタウン、そしてシールドタウンの闇に棲む、妖精の国への路を知っているという不気味な男ランプリー、妖精界との境界に棲む管理人、骨食い魔女。ポイズンの行く手には次々と不思議な光景が拡がり、恐ろしい障害が立ちふさがる。

 持ち前の機知と負けん気、そして心優しいブラムの助けでそれらを乗り越え、やっとの思いでたどり着いた妖精界。しかし、それはポイズンの冒険のほんの始まりにすぎなかった……

ポイズン  妖精界でポイズンを待ち受けていたのは、人間を虫けらのように見下し嫌悪する妖精王だった。妹を返してほしければ“蜘蛛の女王”から短剣を盗んでこい。それが妖精王の出した条件。仕方なく精霊獲りのブラム、骨食い魔女の元から助け出した少女ペパーコーンと猫のアンダーセンと共に、ポイズンは蜘蛛の世界に。頼みの綱は、自分自身の機知と、どうも信用できそうにない妖精王がくれた魔法の球だけ。

 美しく邪悪な妖精王、不気味な蜘蛛巣城の女主人、半人半妖精の秘書官、不思議で恐ろしい各国の君主たち、そして謎の人物〈導師〉。妖しい世界に飛び込んだポイズンたち一行の運命は? 果たしてポイズンは無事妹を取り戻して帰ることができるのか?

 そして物語は後半、思わぬ方向にころがっていきます。どんでん返しにつぐどんでん返し、二重三重に作者が張り巡らした巧みな仕掛けに、驚くこと間違いなし。なにせ……

 この先は物語を読んでのお楽しみ……

 創元ブックランド最新刊『ポイズン』は、天の邪鬼で意地っ張りだけど本当なまっすぐな心の女の子の、ちょっと不気味で怖い、わくわくするような不思議がいっぱいの冒険物語です。

ポイズン・下

著者紹介 クリス・ウッディング

魔物を狩る少年1977年イングランド、レスター生まれ。C・S・ルイスやトールキン、オースン・スコット・カード、テリー・ブルックス等のSF作家やホラー作家に夢中になり、16歳で小説を書き始める。シェフィールド大学在学中(専攻は英文学)、19歳で書いた第1長篇 Crashing が認められ、デビューを飾る。21歳でフルタイム作家となり、以降、かなりのペースで作品を発表し続けている。現在はロンドンに在住。日本のアニメも大好きで、また、複数のバンドに所属して演奏したりもする。著作に『魔物を狩る少年』(創元推理文庫)あり。魔物に席巻されたヴィクトリア朝のロンドンを舞台に、魔狩人の少年と美少女の物語。こちらも是非お読みください。

(2005年10月10日/2005年11月7日)

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