2007年度の鮎川哲也賞・ミステリーズ!新人賞
贈呈式ひらかる

 2007年10月5日、飯田橋のホテル メトロポリタン エドモンド〈悠久の間〉にて、〈第17回鮎川哲也賞〉および〈第4回ミステリーズ!新人賞〉の贈呈式が開かれました。当日は、多数の皆さまにご来席いただきました。

2007年度贈呈式の模様1 鮎川哲也賞は山口芳宏氏『雲上都市の大冒険』(応募時の題名『雲上都市の怪事件』を改題)が受賞しました。また、ミステリーズ!新人賞は沢村浩輔氏「夜の床屋」(応募時の題名「インディアン・サマー騒動記」を改題)が受賞いたしました。

〈第17回鮎川哲也賞〉の選考経過と選評を、選考委員を代表して笠井潔先生が述べられました。

「今年の最終候補3作品には、ひとつの特徴が見られた。いずれも戦前や戦後など、過去に事件の原因や舞台を設定していたことである。その中で『雲上都市の大冒険』は独房からの囚人消失、暗号など本格ミステリの要素が盛りだくさんの作品で、個性の異なるふたりの探偵が登場するのも楽しめた。最終候補作中、最も探偵小説として巧みなできばえだったので受賞作とした」

 受賞者の山口芳宏氏が登壇され、小社社長・長谷川晋一より賞状が授与されました。さらに山口氏には選考委員の島田荘司先生により、正賞のコナン・ドイル像が手渡され、〈第16回鮎川哲也賞〉の受賞者である麻見和史先生より花束が贈呈されました。また、受賞者のご友人である作家・ひかわ玲子先生から届けられた花束が、同じくご友人の作家・柴田よしき先生より、〈浜松ミステリー愛好会〉からの記念の花束が、谷島屋書店メイワン店・寺田結美さんより贈呈されました。

 受賞の挨拶に立たれた山口芳宏氏は「以前から、じっくり腰をすえて長編本格ミステリを書いてみたかった。5本長編を完成させて、駄目だったら作家になるのは諦めようと考えていたが、3本目に書いた『雲上都市の大冒険』で受賞することができて、自分でもびっくりしている。荒唐無稽で行儀の悪い話ではあるが、楽しんでもらえたらとても嬉しい。これから、本格ミステリと心中する覚悟で執筆していきたい」と、受賞の喜びと今後の抱負を語られました。

2007年度贈呈式の模様2 続いて、〈第4回ミステリーズ!新人賞〉の選考経過と選評を、選考委員を代表して綾辻行人先生が述べられました。
「ほかの作品が長編向きのアイディアを枚数ギリギリまで詰めこんでいるのに対し、受賞作はこれぞ短編という分量で的確にまとめられていた。リーダビリティも高く、どんどん読まされてしまう。とても素敵な作品だった。昨年もまったく違う作風の作品で最終候補に残られていて、この引き出しの広さにはすごく期待がもてる」

 受賞者の沢村浩輔氏が登壇され、小社社長・長谷川晋一より賞状が授与されました。さらに選考委員の有栖川有栖先生より、正賞の懐中時計が手渡され、〈第3回ミステリーズ!新人賞〉の受賞者である秋梨惟喬先生より花束が贈呈されました。

 受賞の挨拶で、沢村浩輔氏は「デビューできるのはまだ先のことだと思っていたら、号砲が鳴って走り出すことになりました。転んでしまわぬよう、がんばります」と決意も新たに語られました。

2007年度贈呈式の模様3 最後に、乾杯の辞として、小社刊『赤朽葉家の伝説』が第60回日本推理作家協会賞を受賞した桜庭一樹先生よりお言葉をいただき、その後大いに歓談が盛り上がりました。

 鮎川哲也賞受賞作、山口芳宏『雲上都市の大冒険』は好評発売中、ミステリーズ!新人賞受賞作、沢村浩輔「夜の床屋」は『ミステリーズ!vol.25』に掲載されています。同賞および鮎川哲也賞の選評も載っておりますので、ご参照ください。
 次回〈第19回鮎川哲也賞〉は平成20年10月末日〆切、〈第5回ミステリーズ!新人賞〉は、平成20年3月末日〆切となります。皆さまのご応募をお待ちしております。
 鮎川哲也賞の応募要項はこちらを、ミステリーズ!新人賞の応募要項はこちらをご覧ください。
(2007年11月5日)

●前年の鮎川哲也賞・ミステリーズ!新人賞レポートを読む
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