2006年度の鮎川哲也賞・ミステリーズ!新人賞
贈呈式ひらかる

 2006年10月6日、飯田橋のホテル メトロポリタン エドモンド〈悠久の間〉にて、〈第16回鮎川哲也賞〉および〈第3回ミステリーズ!新人賞〉の贈呈式が開かれました。当日はあいにくの雨にもかかわらず、多数の皆さまにご来席いただきました。

2006年度贈呈式の模様1 鮎川哲也賞は麻見和史氏『ヴェサリウスの柩』が受賞、似鳥鶏氏『理由(わけ)あって冬に出る』、松下麻利緒氏『毒殺(ポイズン)倶楽部』の二作が佳作となりました。また、ミステリーズ!新人賞は秋梨惟喬「殺三狼(しゃさんろう)」、滝田務雄「田舎の刑事の趣味とお仕事」の二作が同時受賞いたしました。

〈第16回鮎川哲也賞〉の選考経過と選評を、選考委員を代表して島田荘司先生が述べられました。

「最終候補6作はどれも、文章力については伯仲していたが、(受賞作となった)『ヴェサリウスの柩』はなかでも見事な文章力で、著者の特質がよく現れている作品だった。発端の着想がよく、前半には非常に高い得点が与えられる。(応募原稿の段階では)弱かった後半も、刊行に当たり磨いたことでよくなり、一個の作品として傑作の領域へ届いたように思う。さらに第二作、第三作と、矢継ぎ早に書き継いでもらいたい」

 受賞者の麻見和史氏が登壇され、小社社長・長谷川晋一より賞状が授与されました。さらに麻見氏には選考委員の笠井潔先生により、正賞のコナン・ドイル像が手渡され、同じく選考委員である山田正紀先生より花束が贈呈されました。また、〈浜松ミステリー愛好会〉からの記念の花束が、谷島屋書店メイワン店・寺田結美さんより贈呈されました。

 受賞の挨拶に立たれた麻見和史氏は「鮎川先生の名を冠した賞をいただけて、うれしく思う。学生時代からミステリのようなものは書いてきたが、ようやく形になったと思えたのが四、五年前のこと。今回の作品は、どうしても書きたい題材を使ったものだった。これから自分に何ができるのかわからないが、がんばっていきたい」と、受賞の喜びと今後の抱負を語られました。

2006年度贈呈式の模様2 続いて、〈第3回ミステリーズ!新人賞〉の選考経過と選評を、選考委員を代表して有栖川有栖先生が述べられました。
「最終候補に残った7編はいずれも本格ものだった。その意味では、どれが選ばれてもおかしくなかったが、選考開始直後から(今回の受賞作である)2編にほぼ決まっていた。対照的な2編が並ぶことで、ミステリファンはより楽しむことができるだろうと考え、同時受賞とした。受賞者はふたりとも、どんどん書いていける人だと思う。大事なのはこの作品だけで終わらないこと。いまはまだ、人前で歌うことを許されただけの状態。なるべく早く、1冊の本という形でのリサイタルを開いて、読者を魅了してもらいたい」

 受賞者の秋梨惟喬氏、滝田務雄氏が登壇され、それぞれ小社社長・長谷川晋一より賞状が授与されました。さらに両氏には選考委員の若竹七海先生より、正賞の懐中時計が手渡され、〈第2回ミステリーズ!新人賞〉の受賞者である高井忍先生より花束が贈呈されました。

 受賞の挨拶で、秋梨惟喬氏は「第2回鮎川哲也賞に別名義で応募した作品が最終候補になってから、十年以上が経過してしまった。受賞した作品は、賞に応募することを考えず、本当に好きなことだけを書いたものだったので嬉しい」と意外な(?)過去を明らかにして喜びを語ると、
 滝田務雄氏は「苦労して書いた作品を、お目にかけたくもあり、反応が恐ろしくもあり、複雑な気分です。(受賞をきっかけに)ミステリを書いていることを知った知人が、自分たちの住む土地を舞台にしてくれと頼んできたが、作品の中とはいえお世話になった人たちの地元で殺人や犯罪を起こすのは、恩を仇で返すことにならないだろうか」と深刻な(?)悩みを披露されました。

2006年度贈呈式の模様3 最後に、乾杯の辞として、小社刊『ニッポン硬貨の謎』が第6回本格ミステリ大賞評論・研究部門を受賞した北村薫先生よりお言葉をいただき、その後大いに歓談が盛り上がりました。

 鮎川哲也賞受賞作、麻見和史『ヴェサリウスの柩』は好評発売中、ミステリーズ!新人賞受賞作、秋梨惟喬「殺三狼」、滝田務雄「田舎の刑事の趣味とお仕事」は『ミステリーズ!』vol.19に掲載されています。同賞および鮎川哲也賞の選評も載っておりますので、ご参照ください。
 次回〈第18回鮎川哲也賞〉は平成19年10月末日〆切、〈第4回ミステリーズ!新人賞〉は、平成19年3月末日〆切となります。皆さまのご応募をお待ちしております。
 鮎川哲也賞の応募要項はこちらを、ミステリーズ!新人賞の応募要項はこちらをご覧ください。
(2006年11月6日)

●前年の鮎川哲也賞・ミステリーズ!新人賞レポートを読む
●翌年の鮎川哲也賞・ミステリーズ!新人賞レポートを読む
鮎川哲也賞トップへミステリーズ!新人賞トップへトップページへもどる