楽園を目指し空をゆく船から、ひとりの少年が墜落した。かれの死は不運な事故とされた。この希望に満ちた船上に、みずから身を投げる理由などあるはずがなかったから。しかし、親友の矢車菊には気がかりなことがあった。親友の死のほんとうの理由を探して、矢車菊は船の中の隠された場所へと足を踏み入れる。歌人、小説家、評論家として活躍する川野芽生、初の小説集がついに文庫化。解説=石井千湖
「無垢なる花たちのためのユートピア」
「白昼夢通信」
「人形街」
「最果ての実り」
「いつか明ける夜を」
「卒業の終わり」
川野芽生
(カワノメグミ )1991年神奈川県生まれ。 東京大学大学院単位取得満期退学。 2018年「Lilith」三十首で第29回歌壇賞を受賞し、20年に第一歌集『Lilith』を上梓。同書は21年、第65回現代歌人協会賞を受賞した。他の著作に、小説『月面文字翻刻一例』『奇病庭園』『Blue』、評論『幻象録』、歌集『星の嵌め殺し』などがある。