リリアンの告白は、彼女とフランシスとの秘めた関係を大きく揺さぶるものだった。彼女たちをとりまくすべてがままならぬ状況で、ある夜、ついに悲劇は起きる。殺人という最悪の形で。ところが、事態は“犯人”さえ予想だにしない意外な展開を迎える……。世界大戦のはざまにあって、時代に翻弄される女性たちの姿を殺人事件を通して描く、ウォーターズにしか書きえぬミステリ。解説=大矢博子
サラ・ウォーターズ
1966年に英国のウェールズに生まれ、ロンドンで育つ。98年に TIPPING THE VELVET で小説家デビュー。翌99年に発表した第2長編『半身』が大評判となり、アメリカ図書館協会賞やサンデー・タイムズの若手作家年間最優秀賞、さらに、35歳以下の作家を対象とするサマセット・モーム賞(イアン・マキューアン、ジュリアン・バーンズ、サルマン・ラシュディ、ピーター・アクロイドなど錚々たる顔ぶれを輩出した)に輝き、一躍英国文壇の期待の星となった。他の作品に『荊(いばら)の城』(上下)、『夜愁(やしゅう)』(上下)。
中村有希
(ナカムラユキ )1968年生まれ。1990年東京外国語大学卒。英米文学翻訳家。訳書に、ソーヤー『老人たちの生活と推理』、マゴーン『騙し絵の檻』、ウォーターズ『半身』『荊の城』、ヴィエッツ『死ぬまでお買物』、クイーン『ローマ帽子の謎』など。