血に濡れたネグリジェ姿で売春宿から逃げてきた10歳の少女、バード。馬車に乗った黒頭巾の男が子どもの遺体を街外れに埋めたらしいという彼女の証言によって、ティムは19もの子どもの遺体を発見してしまう。彼らの多くは、胴体を十字に切り裂かれていた……。宗派対立、アイルランド系移民排斥などを背景に、苦難に負けず「前に進みつづける」人間たちの勇姿を描いた雄篇。解説=日暮雅通
リンジー・フェイ
アメリカの作家、女優。2009年、切り裂きジャックとシャーロック・ホームズをテーマにした長篇Dust and Shadow: An Account of the Ripper Killings by Dr. John H. Watson でデビュー。2013年に上梓した『ゴッサムの神々──ニューヨーク最初の警官』は、2作目にしていきなりアメリカ探偵作家クラブ最優秀長篇賞の最終候補作になった。2014年に続篇にあたる『7は秘密』を、2015年にはシリーズ3作目The Fatal Flameを刊行。シャーロッキアンで、ベイカー・ストリート・イレギュラーズの正会員でもあり、いくつかのホームズ・パスティーシュを雑誌に発表している。
野口百合子
(ノグチユリコ )東京外国語大学英米語学科卒業。フリードマン「もう年はとれない」、ボックス「発火点」「越境者」「嵐の地平」「熱砂の果て」、パーキン「小鳥と狼のゲーム」、クリスティ「秘密組織」「二人で探偵を」など訳書多数。