メトロポリタン博物館から忽然と消えた古写本、ペントハウスで起きた密室殺人、乗る者を死に追いやるボートの怪、古詩のとおりに消失と出現を繰り返す竪琴……いずれ劣らぬ怪事件を解き明かすのは、日本人執事を従えた謎の紳士タラント氏。巨匠クイーンが、当代におけるもっとも想像力に富んだ傑作と評した短編集を増補し、不可能趣味に満ちたシリーズ全作品を網羅した決定版! 解説=千街晶之
「古写本の呪い」
「現われる幽霊」
「釘と鎮魂曲」
「〈第四の拷問〉」
「首無しの恐怖」
「消えた竪琴」
「三つ眼が通る」
「最後の取引」
「消えたスター」
「邪悪な発明家」
「危険なタリスマン」
「フィッシュストーリー」
C・デイリー・キング
1895年ニューヨークに生まれる。心理学を学び、コロンビア大学で修士号、イェール大学で博士号を取得。1932年、長編『海のオベリスト』で作家デビュー。『鉄路のオベリスト』『空のオベリスト』と続く〈オベリスト三部作〉と、『いい加減な遺骸』などの〈ABC三部作〉からなるマイケル・ロード警部補もの長編6作のほか、〈クイーンの定員〉に選出された短編集『タラント氏の事件簿』を刊行したが、第二次世界大戦後は心理学の研究に専念し、創作からは距離をおいた。63年没。
中村有希
(ナカムラユキ )1968年生まれ。1990年東京外国語大学卒。英米文学翻訳家。訳書に、ソーヤー『老人たちの生活と推理』、マゴーン『騙し絵の檻』、ウォーターズ『半身』『荊の城』、ヴィエッツ『死ぬまでお買物』、クイーン『ローマ帽子の謎』など。